近年のスマホ完全普及に伴い、そろそろ飽和状態か?と思われた移動通信業界ですが、そんなことが嘘のように毎年のようにスマホの新しい通信規格が出ており、既にLTEの次世代通信規格である5G普及がはじまりつつあります。
2020年には楽天モバイルが第4の通信キャリアとして正式参入し、これから日本全国に一気に楽天の基地局を増やしていくことが喫緊の課題になっていることがわかりますね。
そんな背景もあり、無線技士の有資格者の需要は高まっていることは紛れもない事実であり、「自分も一陸特を取得してみたい」と思う方はたくさんいると思います。
しかし具体的にどんな業務や求人があるのかはイマイチよくわからない方も多いと思います。今回はそんな一陸特の資格を活用できる業務・職務を紹介してみたいと思います。
一陸特とは?
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第一級陸上特殊無線技士(一陸特)は、総務省が定める無線従事者資格の一つです。
陸上に設置する無線設備に関わる操作や設置などを扱うために必須の資格になっており、第二級陸上特殊無線(二陸特)、第三級陸上特殊無線(三陸特)などの陸上特殊無線資格の最上位資格になります。
以下で一陸特の資格取得のメリットを紹介していますので、こちらも併せてどうぞ。
![](https://digiradio.simple-was-best.com/wp-content/uploads/2023/07/DIGI-Radio-LP-4-1.png)
一陸特でできる業務とは?
一陸特の資格で従事できる業務は陸上に特化されたものになります。
一陸特での対応業務範囲
先ずは資格として操作できる規定は電波法で以下のように定められています。
① 固定局、基地局等の陸上の無線局の多重無線設備で30MHz以上の電波を使用するもの
② 受信障害対策中継放送局及び特定市区町村放送局の無線設備
③ 固定局、基地局等の陸上の無線局(注1)で1,606.5kHz~4,000kHz までの電波を使用するもの
④ 固定局、基地局等の陸上の無線局のレーダー(③のもの以外のもの)」
⑤ 固定局、基地局等の陸上の無線局(注1)で人工衛星局の中継により無線通信を行うものの多重無線設備
⑥ 固定局、基地局等の陸上の無線局(注1)の無線設備(レーダー及び人工衛星局の中継により無線通信を行う無線局の多重無線設備を除く。)で次のもの
- 50W以下の無線設備で25,010kHz~960MHzまでの周波数の電波を使用するもの
⑦固定局、基地局等の陸上の無線局(注1)の無線設備(レーダー及び人工衛星局の中継により無線通信を行う無線局の多重無線設備を除く。)で次のもの
- 100W以下の無線設備で1,215MHz以上の周波数の電波を使用するもの
長々と書いていますが、これを業務の対応例で言えば、「テレビやラジオの放送局」、「防災行政無線」、「移動通信基地局」などに対応することができます。
因みに警察のスピードレーダーや自衛官が使用する無線なども一部対応業務入りますが、特殊業務になるので、一般人にはあまり関係ないですね。おそらくこういった人たちはもう少し違う資格を持っているのかもしれませんが。
他の資格との比較
一陸特を含む無線従事者の主な職業が日本無線協会で紹介されていますので参考までに。
資格 | 主たる職場 |
---|---|
第一級総合無線通信士 | すべての船舶(特に国際航海の船舶)、海岸局、官公庁、電気通信 事業関係、無線機器メーカー、高専、高校、中学、各種学校などの 教員 |
第二級総合無線通信士 | 船舶(GMDSS対象船舶を除く。)、海岸局、官公庁、電気通信 事業関係 |
第三級総合無線通信士 | 小、中型漁船(特に電信船)、漁業用海岸局など |
第一級海上無線通信士 | GMDSS対象船舶、海岸局など |
第二級海上無線通信士 | 同上 |
第三級海上無線通信士 | 同上 |
第四級海上無線通信士 | 小型漁船(電話船のみ)、小規模漁業用海岸局、大型ヨット(中短 波帯を使用するもの)など |
航空無線通信士 | 国土交通省(航空管制官)、各航空会社(特にパイロット及び整備 員)、航空管理など |
第一級陸上無線技士 | 放送局(NHK、民放)、大規模な送信所、官公庁、電気通信事業 関係、無線機器メーカー、高専、高校、中学、各種学校などの教員 |
第二級陸上無線技士 | 放送局(NHK、民放)、大規模な送信所、官公庁、電気通信事業 関係、無線機器メーカー |
第一級海上特殊無線技士 | 漁船(インサルマット装備のもの)、船舶(国際VHF)など |
第二級海上特殊無線技士 | 大型ヨット、小型の船舶及び漁船、遊漁船など |
第三級海上特殊無線技士 | プレジャーボート(マリンVHF)、沿岸小型漁船など |
レーダー級海上特殊無線技士 | 主に船長、航海士など |
航空特殊無線技士 | 小型飛行機(国内)、自家用飛行機、ヘリコプターなど |
第一級陸上特殊無線技士 | 放送局(TV中継)、電気通信事業者、防災行政無線、無線中継所 など |
第二級陸上特殊無線技士 | 警察、消防、防災行政無線、MCA、各種業務、タクシー無線など |
第三級陸上特殊無線技士 | MCA、各種業務の小規模基地局、タクシー無線など |
国内電信級陸上特殊無線技士 | 陸上自衛隊 |
一陸特で就職
「一陸特 求人」と調べてもらうだけでも結構な数の求人が出ることがわかります。基本的に資格が必須要件になることは少ないですが、歓迎条件などには必ず入るような感じですね。
業務内容もやはり移動通信業界のものが多いですが、一部テレビ関係のものもありますね。放送業界のビデオエンジニアなども一陸特の対応業務内になりますのでかなり多岐に渡っていることがわかります。
移動通信業界の中だけでも施工・工事メンテナンスだけでなく、品質調査(カバレッジ)要員や、さらには通信コンサルなどの業務もあります。
以下に参考までにどんな求人が出ているのか紹介してみたいと思います。
携帯電話基地局の施工工事・メンテナンス
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・無線基地局の施工、メンテナンス業務
・蓄電池交換などの電気工事/付帯設備のメーカー改修工事
・無線基地局の点検業務/イベント開催地への異動基地局車設置における進行管理
・月4回ほど夜間の緊急対応に備えた待機(別途手当支給)※対応が必要な場合のみ、連絡を受けて出勤
<必要業務経験>
■必須条件:(以下いづれかに該当している方)
・通信装置またはマイクロ波用アンテナのメンテナンス経験
・普通自動車免許をお持ちの方
<必要資格>
必要条件:普通自動車免許第一種
歓迎条件:特殊無線技士(陸上)1級、国内電信級陸上特殊無線技士、第2種電気工事士
携帯電話基地局のエリア品質に関する業務
■業務内容:
携帯電話基地局のエリア品質に関する業務を担当します。
・LTE基地局の統計確認
・LTE基地局の卓作業
・Excel、PowerPointを使用した報告書作成
・エリアシミュレーションソフトを使用したエリア設計
・端末を使用した現地品質調査
・通信ログからの基地局正常性確認
■必須条件:
・携帯電話の品質改善業務に関わる経験
・PCスキル(Excel、Word、PowerPointの基本操作レベル)
<必要資格>
歓迎条件:特殊無線技士(陸上)1級
情報通信ネットワークシステムの企画、コンサルティング
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■業務内容
・お客様の運用を理解、分析し、仮設設定から提案活動を実施
・受注後は、提案に基づき、お客様のプロセス改革、効率化、品質向上を、ICTを駆使して実現
・お客様と直接交渉し要件定義を行う他、プロジェクトの進捗を管理
<必要業務経験>
■以下の資格をお持ちの方:
(1)Cisco、Linux、Windows等のベンダー資格
(2)第一級陸上特殊無線技士資格
映像配信設備の構築・運用・保守業務
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マスター送出技術、サブ制作技術など :: スキルや経験、希望、適性に応じ、技術系業務をお任せします ::
- マスター(放送監視・管理)
- サブ(ニュース番組送出技術)
《活かせる資格・経験》※必須ではありません
- 第一級陸上無線技術士
- 第一級陸上特殊無線技士
- 放送技術経験者
番組制作や映像制作、DVD製作における制作
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【業務詳細】
・映像システムの構築、保守、運用
・各カメラの明るさや色、アイリス(絞り)の調整
・カメラの映像信号管理
・ロケ、スタジオでの中継における伝送業務
・カメラ、VTRその他の機材メンテナンス
<必要業務経験>
・VE経験をお持ちの方
<歓迎条件>下記の資格がある方
・第2級陸上無線技術士
・第1級陸上特殊無線技士
・電気工事士
・基本情報技術者
テレビ局勤務の映像受配信
・国内外から集まる映像素材を受信
・報道用伝送素材の収録、素材情報の入力
・素材のダウンロードとサーバー転送
・取材した素材を在京局やネット局へ送り出し
<応募資格>
第一級陸上特殊無線技士の資格をお持ちの方
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は一陸特の資格を活用した業務を紹介していきました。最近は5G/IOTなどの広がりも後押しとなり、移動通信の業界での有資格者のニーズというのが年々高まりを見せています。さらには放送業界でも、放送設備は無線で構築されていることもあり、メディア業界からのニーズも多数あることがわかりますね。
念のためですが、一陸特の資格を持つことで簡単に就職ができるということではなく、あくまでも経験というのはどこの業界でも優遇されるものではありますので、その点は注意してください。
しかし有資格者とそうでない方とで比べた場合にはもちろん資格を持っている方が有利であることは間違いありません。
是非一陸特の資格取得を目指してみてください。